2019年03月26日

7 武侠三国志 剣豪徐庶の物語

「痛たっ! お前みたいなバケモノが、江湖にゴロゴロいるものか! あんな高いところに飛び上がったり、飛び降りたりできるのは、お前くらいしかない! 昨夜、倉舒様と一緒にいたのは、お前だ!」

「軽功のことですか。なるほど、倉舒様と共にいた者が、軽功を使ったというのであれば、その者は、間違いなく、江湖の武芸者でしょうな」

「そうであろう。じゃから、わしは、元直殿に此度の捜索の協力を仰ぎに来たのだ。引き受けてくれぬか」

程cの言葉に、徐庶は、しばし、腕を組んで考え込んでいた。

「一つお尋ねしてよろしいでしょうか」

「なんなりと」

「倉舒様が亡くなる直前、倉舒様が病に伏せていたことは確かですか?」

「間違いない。仮病などではなく、本当に重い病であった。国中の名医を集めて治療に当たらせたものの、誰にも救うことはできなかった。そして間違いなく、倉舒様は息絶えたはずだった」

「なのに今になって、生きていたと」

「左様、先ほど、棺桶を検めたが、空であった。骨もなく、ただ、竹の棒が一本入っていただけだった。このような時、知識人は、昇仙したなどというが、わしは信じておらん」

「興味がありますね……」

「では、引き受けてくださるか?」

「倉舒様を捕まえることは引き受けませんよ」

徐庶が目をそむけた。

程cは軽くため息を漏らした。

徐庶は、曹操の陣営に加わってから、軍師らしい活躍は全くしていない。

もちろん、現在、曹操に最も近い軍師は、程c自身であるが、程cは、身の程知らずではない。

もはや、己は年老いたので、そろそろ若い者に軍師の座を譲って隠居したいと常々考えている。

曹操の陣営に、人材は多いが、軍師になりうるものといえば、己の他には、徐庶くらいしか見当たらないのである。

曹操に徐庶を推薦したのも、程c自身だった。

だが、肝心の軍師としての役目を果たしてくれないのでは意味がないではないか。

巷では、程cが徐庶の母親に偽手紙を書かせて、徐庶を曹操の陣営に、おびき寄せたということになっているが、全くのでたらめである。

徐庶が、許都近くの豫州潁川郡出身なのは事実であるが、徐庶の母親はすでに、何年も前に亡くなっており、程cは全く面識がない。

そうであるから、徐庶が密かに、曹操や程cに対して反感を持っていて、力を貸さないというわけでもないのだ。

「のう……。元直殿が故郷に戻ってきた本当の訳は何かね?」
posted by ノベル時代社武侠小説プロジェクト at 21:20| Comment(0) | TrackBack(0) | 連載小説 武侠三国志 剣豪徐庶の物語
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