2019年02月19日

184年2月 張角率いる黄巾賊が一斉蜂起

174年頃に結成された太平道は、大賢良師を名乗る教主張角の下に、数十万人とも言われる信者が集まった、今日、最大の宗教組織である。その巨大なカルト教団が184年2月に河北一帯で一斉に蜂起した。各地で組織的にテロを行っている彼らの目論見は漢帝国の転覆にあるとみられている。漢帝国の秩序は、乱され、建国以来の危機に陥った。

反乱を起こした太平道は河北を中心に勢力を伸ばしている新興宗教団体である。道教の一派で、黄帝信仰の一種とされる黄天を崇めている。
もともとは、病人に符水という護符を沈めた水をのませて病の治療を行う霊感療法の団体に過ぎなかったが、不思議なことに治癒率が非常に高く、また、張角に類まれなカリスマ性があったことから、急速に信者を増やしてきた。
信者数が増えるに従い、張角は、組織の再編を行い、36のグループに分けたうえで渠帥と呼ばれる頭目にそれぞれのグループを率いさせた。その組織は、軍事的性格を有しており、今日の武装蜂起に備えたものとみられる。
この武装集団を率いるのは、天公将軍を名乗る張角のほか、その弟とみられる地公将軍張宝、人公将軍張梁である。彼らは、同志の証として、信仰する黄天にちなんで、黄色の布を被っており、このことから、張角らの武装集団を黄巾賊と呼んでいるとのこと。
太平道は、目下のところ、反乱を成功させて、勢力を爆発的に拡大しているとみられるが、これに対する漢帝国の対応は、遅れている。
洛陽の宮廷には、多数の報道陣が詰めかけているが、漢帝国の報道担当者は未だに姿を現していない。ある官僚は、「皇帝の側近である宦官が、自分らの失政を繕うために報告を握りつぶしており、皇帝陛下のお耳に達していない」と怒りをぶちまけた。
漢帝国は、光武帝による再興以来、最大の危機に陥っている。
【三国志ニュースの最新記事】
posted by ノベル時代社武侠小説プロジェクト at 23:39| Comment(0) | TrackBack(0) | 三国志ニュース

必中飛刀の鷹幸

必中飛刀の鷹幸

PRノベル時代はライトノベル、時代小説を読めるオンライン小説サイト/ケータイ小説サイトです。息抜きに軽く読める小説がたくさんありますよ

冒頭部抜粋

 必中飛刀の鷹幸
                             大滝七夕

 1、露草の国

 確かに、娘の悲鳴である。
 己の背丈にも届きそうなほど高い雑草がどこまでも生い茂る原っぱの向こうからキャッ!という声が響いてきた。
 同時に、バサッと布団が落ちるような音。
「どうした?」
 ショートヘアの黒髪に鷹のような鋭い目つき。それに、やや鼻が高く整った顔立ち。身長は百七十と低くもなく高くもない。紺の着物に灰色の野袴を穿いた精悍な青年が、今しがた夕陽に向かって飛び立った鳩に、鉛筆ほどの長さと太さの細身の棒手裏剣を投げ打つ手を止めて、声がした方を見やる。
 もう一度、
「成美。どうした?」
 と、そこにいるはずの娘に問いかける。
 が、明朗な返事はない。その代わり、微かなうめき声が聞こえてくる。
 ただ事ではない。何か起きたに違いない。
 鷹の目をした青年が、ハッとして、高い雑草をかき分けながら、駆ける。五メートルばかりも進むと、とうとう、何が起きたのか理解した。
 娘が仰向けに倒れていた。
 赤い小袖に灰色の野袴をまとい、手に複合弓と矢を持ち、肩を隠すほど垂れ流した黒いさらさらとしたロングヘアの娘。身長は百六十。程よく膨らんだ胸元と腰回りは、大人と変わらない。うりざね顔に睫毛をたっぷりと宿した垂れ目の瞳を湛え、純白の翡翠を削り出して作ったかのような白く艶々とした肌。それに、血色が良くプルンとしたイチゴゼリーのような唇は、見ているだけで吸い込まれそうなほど魅力的だ。
 その娘の唇から、うめき声が漏れていた。
 が、もはや、声がかすれている。
「ど、どうしてなの……鷹幸さん……」
「成美!」
 鷹幸と呼ばれた青年。すなわち、毛里鷹幸は、草むらに横たわる成美こと、鶴谷成美の傍らにくずおれるように跪くや、成美の背中に左腕を滑らせて抱きかかえる。
「も、もうだめよ……」
 成美の盛り上がった胸の中央から微かに血が滲みでている。そこには、細く小さいが鋭く冷たい細長い鉄の棒が突き刺さっている。
 なんと、鷹幸が今しがたまで、打っていた細身の棒手裏剣と寸分たがわぬ新品の鉛筆とほぼ同じ長さと太さの手裏剣である。
「お、俺が打ったのか……?」
「ほ、ほかに誰がいるっていうの……」
「そ、そんな馬鹿な……」
「で、でも、た、鷹幸さんを恨まないわ……」
 そこまで言うと、成美は、はあっ……とため息をついて、白目をむいて、頭をだらりと傾けた。息絶えてしまったのだ。
「そ、そんな馬鹿な……どうして、俺が成美を……成美……成美……」
 夕陽は何事もなかったように、成美を揺さぶり続ける鷹幸の背中に注がれ続ける。
 上空を円を描くように飛ぶ黒い大きな影。
 ピーヒョロヒョロ……という鳴き声を発したと思うと、その影は、バタバタと羽音を立てながら、舞い降りて、鷹幸の左肩に止まった。
 黒く大きな体つきに、鋭い目つきと嘴を持つ鳶である。
 鷹幸の肩に鳶の鋭い爪が食い込んでいる。これだけ食い込んでは痛いはずである。
 しかし、鷹幸は、そんなことを一切気にせずに、
「成美……成美……」
 とうめき声を漏らしながら、成美を揺さぶり続けるばかりである。
 やがて夕陽が、黒雲に覆われて、辺りは急激に薄暗くなった。

 成美との出会いは偶然だった。
 鷹幸は、もともとこの世界――『露草の国』の人間ではない。
 ふさわしい言葉ではないが、『現実』の日本の公立上州高校に通う三年生であった。公立上州高校は、多くの生徒が有名大学に現役で合格する県下有数の進学校である。
 鷹幸は、その公立上州高校でもトップクラスの成績で、模範生であった。しかし、それは去年までのことだ。今では、すっかり、やる気を無くして、成績はがた落ち。学校生活にも張り合いが持てなくなっていた。
 きっかけは、失恋である。
 何年も信じていた女の子。肩を寄せ合い、抱き合い、キスまでかわし、ずっと一緒にいようと約束した女の子に裏切られたのだ。
 些細なことかもしれないが、鷹幸にとっては重大なことだった。
 学業にも影響するほどに……。





必中飛刀の鷹幸


 失恋して日常生活に張り合いが持てなくなった男子高校生がひょんなことから知り合った女子高生についてゆくと江戸時代風の異世界に迷い込んでしまう。早速、手裏剣の特技を活かして狩りをしていると謀略に巻き込まれ、牢に放り込まれてしまうが……。

 現実の世界では公立上州高校の三年生である毛里鷹幸は、暴漢に襲われていた鶴谷成美という美貌の娘を助けたことをきっかけに、鶴谷成美が住まう江戸時代風情の溢れる異世界『露草の国』へ誘われる。
 鷹幸は、手裏剣の名手として露草の国での暮らしを満喫していたが、ある日、鶴谷成美が胸に手裏剣を受けて絶命してしまう事件に巻き込まれる。事件が起きた時、周囲にいた手裏剣の遣い手は鷹幸だけ。犯人として疑われて牢獄に捕らわれるが、剣賀組のくノ一『猫目の朋美』によって、救われる。
 猫目の朋美の案内で、剣賀組の頭にして、必中飛刀の根賀剣泉という手裏剣の遣い手の三番弟子となる。さらに腕を上げた鷹幸は、相思相愛の仲になった猫目の朋美と共に、剣賀組の一員に加わる。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
大滝 七夕
法学部在学中に行政書士、宅建等の資格を取得し、卒業後は、行政書士事務所、法律事務所等に勤務する傍ら、法律雑誌の記事や小説を執筆し、作家デビュー。法律知識と実務経験をもとにしたリーガルサスペンスを中心に、ファンタジーや武侠小説などを執筆している。(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
posted by ノベル時代社武侠小説プロジェクト at 19:50| Comment(0) | TrackBack(0) | 電子書籍

2019年02月17日

武侠小説 襄陽城の蘭陵王

武侠小説 襄陽城の蘭陵王

PRノベル時代はライトノベル、時代小説を読めるオンライン小説サイト/ケータイ小説サイトです。息抜きに軽く読める小説がたくさんありますよ

冒頭部抜粋

 武侠小説 襄陽城の蘭陵王     
                   大滝七夕
 一
 
 みぞれが降りしきる中、薄汚れてすり切れた袴褶をまとった巨漢の漕ぐ小舟が長江の支流漢水を遡っていた。
 小舟に乗っているのは、漕ぎ手の巨漢の他、舳先に立った若武者だけである。
 刃のような寒風が若武者の頬を撫でるが、若武者は、後ろ手を組み、みぞれで霞むはるか彼方の水面をじっと見つめたまま身じろぎもしなかった。
 ちぐはぐな若武者であった。漢服である空色の袍衫をまとっているが、頭には、日本の侍烏帽子を頂き、腰刀を差し太刀を佩いている。独り言をつぶやく時は、日本の言葉になるが、巨漢に話しかけるときは、流暢な漢語を話す。
 身の丈は六尺ばかりもあるが、体の線は細い。面長の白く艶やかな肌に、濃い睫毛を宿した柔和な目つきをしており、女のようにも見えてしまう。武芸とは無縁で、書院にこもって科挙の勉強に励んでいそうな書生といった風情の若武者である。
 だが、背がそこそこあるだけの優男だと思って甘く見ると痛い目に合う。見た目とは裏腹に、この若武者は武芸が相当にできるのだ。
 身の丈は七尺、顔つきが仁王像のように厳めしく横幅は若武者の三倍はあろうかという筋骨隆々とした巨漢は、数日前にそのことを身を持って思い知らされている。
「師父。寒くないですか?毛皮があるので着込んでくだせえ」
 巨漢が若武者の後姿を見上げながら漢語で話しかけた。
「不要だ」
 若武者も漢語で答える。
「しかし、師父。襄陽はまだ遠いですぜ。寒風に当たっていてはいくら師父でも風邪をひきますぜ……どうか暖かい格好をしてくだせえ」
「師父、師父とうるさい。俺は、お前を弟子にした覚えはない」
「しかし、師父……いや、しょうに……すけたけ……様がなんとおっしゃろうと、俺は、あなた様を生涯、師父と仰ぐことに決めたのですから」
「少弐資武だ」
 若武者――少弐資武がぴしゃりと言い放つ。
「へい。少弐資武様。日本の言葉はどうも発音しにくくて……」
「岳蒙よ。宋国では、決闘して負けたら弟子にならなければならないという決まりでもあるのか?」
 資武は、相変わらず、目を漢水の彼方に向けたまま、巨漢――岳蒙に質問する。
「いいえ。そうではありません。ただ、俺は、江湖でもそれなりに腕が立つと自負しておりましたが、漢口で師父と手合せした時は、手も足も出ませんでした。海の向こうの日本の武芸があれほど優れているとは……まさに、井の中の蛙大海を知らずというやつで……」
「俺も驚いている。大陸に着いてから何日も船に乗っているのに未だに襄陽に着かぬとは。宋国はいったいどれほど広いのだ?」
 資武がふと感嘆の息を漏らす。
「師父。これくらいで驚いてはいけません。襄陽より南は、華南と言いますが、宋国の領土の半分に過ぎないのです。元々、宋国は、はるか北方、万里の長城まで支配しておりましたが、女真族の金に攻め入られて、国土の半分を失い、金が滅びたと思えば、草原の民である蒙古に攻め入られて、今や風前の灯火……何とも情けない限りです。俺の先祖である岳飛様もさぞお嘆きでしょう……」
「うむ……」

 時は、一二七三年の一月。
 蒙古帝国――元の皇帝フビライは、南宋を併呑せんとして、襄陽に蒙古の将軍アジュを総司令官、華北の漢人史天沢を副将とする大軍を送り込んだ。
 襄陽は、金を滅ぼし、華北を制圧した蒙古軍が南下を試みて以来、約四十年の長きにわたって、南宋の最前線であり続けた。古来より、華北から攻め下り、華南を制圧しようとする者にとっては、真っ先に攻略しなければならない要衝であるが、決して、難攻不落の要塞というわけではない。
 漢水の流れ、頑丈な石積みの城壁に守られているとは言え、華北に数多ある城と構造は大して違いがない。にも拘らず、蒙古軍は、襄陽城を攻めあぐねていた。
「そりゃもう、呂鬼神のおかげですよ。呂鬼神が襄陽にいる限り、蒙古軍が攻め落とすことはできないですよ」
 と、岳蒙が語って聞かせてくれた。
「呂鬼神とな?一体何者なのだ?」
「師父は、後漢末期の猛将呂布をご存知ですか?」
「うむ……赤兎馬にまたがり、方天画戟を奮って、戦場を駆ければ、敵なし。張飛、関羽、劉備の三英雄が束になってかかっても敵わなかったという三国志の逸話なら、日本でもよく知られている」
「呂鬼神は、その呂布の生まれ変わりではないかというほどの猛将なのです」
「呂布の生まれ変わりとな……」
「呂鬼神は、襄陽の守将呂文煥の一族の者だそうですが、本当の正体は不明とか」
「どういう意味だ?」
「呂鬼神は、戦場に出るときは、騎兵甲と兜で身を固めるばかりでなく、鬼神の面をつけているため、その素顔を見たことがある者は一人もいないそうです」
「ほう……まるで美貌を隠すために鬼の面をつけて戦ったという北斉の皇族高長恭こと蘭陵王のようだな」
「へい……それがために、呂鬼神に関しては、江湖でいろいろなうわさが持ち上がっておりましてな。呂鬼神は、醜悪な鬼のような顔だという者もいれば、美貌の青年だという者もいるし、実は女でしかも仙女のような絶世の佳人だという者もいるわけでして……」
「面白い。ますます、襄陽が待ち遠しい」
 小舟の舳先に立った資武は、まだ見ぬ襄陽を待ちわびていた。






武侠小説 襄陽城の蘭陵王


 元寇の危機が迫りつつあった一二七三年の一月。南宋と蒙古の戦いの最前線――呂文煥が守る襄陽城に九州より日本の武士が送り込まれた。城は、呂布の生まれ変わりとも言われ、蘭陵王のように鬼神の面を付けて戦う謎の猛将によって持ちこたえていたが……。中国を舞台にした歴史ファンタジー小説。

 日本に元寇の危機が迫りつつあった一二七三年一月。呂文煥が守る襄陽城は南宋と蒙古の戦いの最前線である。
 九州防衛の責任者である鎮西奉行少弐資能の末子、資武(剣術京八流の遣い手、漢語が堪能)は、父の命により、蒙古軍の実態を探るために観戦武官として襄陽城へ赴く。誠忠岳飛の末裔を自称する好漢の岳蒙、固く城門が閉ざされた襄陽城を自由に行き来できる謎の美少女呂襄と出会い意気投合。二人の案内で襄陽城に入る。
 襄陽城は呂布の生まれ変わりとも言われ、蘭陵王のように鬼神の面を付けて戦う正体不明の猛将呂鬼神の活躍で持ち堪えていた。呂鬼神を打ち破るべく蒙古軍は、華山派の一番弟子史建華(蒙古の宰相 史天沢の孫)を送り込んでくる。戦場で呂鬼神と史建華は、華山派の奥義を以て、互角の戦いを繰り広げる。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
大滝 七夕
法学部在学中に行政書士、宅建等の資格を取得し、卒業後は、行政書士事務所、法律事務所等に勤務する傍ら、法律雑誌の記事や小説を執筆し、作家デビュー。法律知識と実務経験をもとにしたリーガルサスペンスを中心に、ファンタジーや武侠小説などを執筆している。(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
posted by ノベル時代社武侠小説プロジェクト at 18:52| Comment(0) | TrackBack(0) | 電子書籍